環境への取り組みTCFD提⾔に沿った情報開⽰
TCFD提言への賛同
当社は、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、2023年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同を表明いたしました。
TCFDとは
TCFDとは、G20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」を指します。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク及び機会に関する下記の項目について開示することを推奨しています。
・ガバナンス:気候変動に対してどのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。
・戦略 :短期・中期・長期的な気候変動によって、企業経営にどのような影響を与えるか。またそれについてどう対応していくのか。
・リスク管理:気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。
・指標と目標:リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。
ガバナンス
当社は、Mission Statement The Snow Peak Wayに基づいた企業活動を実践し、社会と自らのサステナビリティ実現に向けた取り組みを推進しております。これを推進する体制を強化し、持続的に企業価値を高めていくため、経営会議の下に代表取締役会長兼社長執行役員を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、リスク管理体制を構築しております。
全社的なコーポレート・ガバナンスのなかで、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への対応やガバナンス強化のために、2023年5月より、リスク・コンプライアンス委員会内で、気候変動を含む、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の全ての重要なリスクと機会を選定・抽出し、その影響度合いの評価、施策の立案、進捗管理を行う体制に移行いたしました。
リスク・コンプライアンス委員会は、気候変動関連リスク・機会の特定や影響の評価、および、全社のサステナビリティに関する方針・目標・実行計画の策定、ならびに、KPIに対する推進管理、評価を担っており、最低でも半期に一度、気候変動のリスクマネジメントに関する事項のほか、主要なサステナビリティ課題に関する行動計画等について、協議、または審議・決定を行っています。
また、リスク・コンプライアンス委員会での議論を踏まえて、その内容を半期に一度、経営会議で審議した後に取締役会に報告しており、取締役会は同委員会の活動報告を受けて、当社の気候変動に関するリスク・機会および中長期目標に関する取り組みの進捗状況の監督、助言を行う仕組みとしています。当社では、代表取締役会長兼社長執行役員が気候変動に関する課題に対する責任を負っています。
気候変動に関するガバナンス体制図
戦略
当社では、気候変動に対する緩和と対応に向けて、当社を取り巻く気候変動に関するリスク・機会の洗い出しを行い、1.5℃~2℃シナリオと、4℃シナリオの二つのシナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。
影響度の分析に使用したシナリオにおいては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)が公表している気候変動シナリオを参考にしており、代表的なシナリオを以下に示しております。
影響を及ぼすと考えられる時期については、2030年、2050年の外部影響を考慮して、「短期」「中期」「長期」に分類しております。(「短期」:3年以内、「中期」:3年超~10年以内、「長期」:10年~30年を想定。)
リスク・機会の各要素に対して、気候変動に関連するドライバー(要因)から当社事業に与えうる約50の項目の事業インパクトについて、影響度を定量的かつ定性的に検証し、大・中・小の3段階で評価しております。
分析手法
サステナビリティ事務局が主体となり、脱炭素社会に向かう1.5℃~2℃シナリオと温暖化が進む4℃シナリオを選択し、各リスク・機会について分析・評価しました。
1.分析のプロセス
2.気候変動シナリオの概要
1.5℃~2℃シナリオ
気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温の上昇を産業革命期以前と比較して1.5~2℃未満に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオ(NZE)では、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオ(APS)に比べて大きくなると想定されています。
<分析に用いたシナリオ>
1.5℃シナリオ
・IEA Net Zero Emission(NZE)
・IPCC SSP1-1.9
2℃シナリオ
・IEA Announced Pledges Scenario(APS)
・IPCC SSP1-2.6
4℃シナリオ
気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されています。
<分析に用いたシナリオ>
・IPCC SSP5-8.5
リスク・機会のインパクトと対応策
対象範囲 自社全体、サプライヤー、顧客、投資家移行リスク 1.5~2℃シナリオで最も顕在化すると想定
物理リスク 4℃シナリオで最も顕在化すると想定
発現時期 短期:3年以内、中期:3~10年以内、長期:10~30年以内
影響度 大:財務的影響額・影響範囲が大きい、中:財務的影響額・影響範囲が中程度、小:財務的影響がほとんどない
リスク・機会の種類 | 要因 | 事業インパクト | 時期 | 影響度 | 潜在的な対応策 | |
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移行リスク | 政策 法規制 |
炭素税導入 炭素税率の上昇 |
炭素価格など規制対応コストの増加 | 長期 | 中 | ・再生可能エネルギー ・省エネルギー設備の導入 |
原材料価格の高騰による調達の難化 | 中期 | 大 | ・低炭素製品 ・サプライヤーとのエンゲージメント構築 |
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製品・原材料に関する規制 | 製造、販売規制に伴う売上減少 | 中期 | 大 | ・製品仕様の変更を検討 | ||
技術 | 低炭素技術の導入促進 | 低炭素型の素材転換による費用の増加 | 中期 | 中 | ・使用素材の分散 ・素材メーカーとの協働 |
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再生可能エネルギーの普及 | 発電コスト高騰による電力購入費用の増加 | 短期 | 中 | ・積極的な電源確保の検討 | ||
市場 | 消費者選好の変化 | 低炭素製品の提供不足に伴う販売機会の損失 | 中期 | 大 | ・環境配慮事業の成長に向けた投資/開発の拡大 | |
原油価格の高騰 | 合成素材の調達コスト増加 | 中期 | 中 | ・合成素材に頼らない製品開発 ・製品の構成素材の検証 |
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評判 | 気候変動対応への遅れ | 企業ブランド低下に伴う需要減少 | 中期 | 大 | ・気候変動対策を率先して実施 | |
情報開示不足による外部評価の低下 | 短期 | 大 | ・網羅的な情報開示及び開示情報の充実 | |||
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 店舗・キャンプ場の被災、休業に伴う売上損失 | 短期 | 大 | ・各拠点におけるBCP対策の策定 |
サプライチェーンの被災による操業停滞 | 短期 | 大 | ・サプライヤーに向けたBCP対策強化の要請 | |||
疫病の蔓延 | 従業員の疫病感染による店舗操業の低下 | 中期 | 大 | ・感染症発生時の対応可能な体制構築 | 慢性 | 平均気温上昇 降水パターンの変動 |
気温上昇、降水パターンの変化による夏季のキャンプ需要減少 | 長期 | 中 | ・各拠点における水害リスクの事前調査の実施および気温上昇に伴う体感温度の低下に向けた対応等緩和策の実施 |
労働環境の悪化に伴う生産性低下 | 長期 | 中 | ・屋外業務実施時の作業分散に伴うシフト変更や飲料配布などの緩和策の実施 | |||
海面上昇 | 沿岸地域の生産拠点、店舗の操業低下 | 長期 | 中 | ・各拠点における水害リスクの事前調査の実施(必要に応じた移転検討の実施) | ||
機会 | 資源効率化 | 自社製品のリサイクル率向上 | 循環型ビジネスモデル構築による需要増加 | 中期 | 中 | ・リサイクル素材を用いた商品開発 ・リサイクルの啓蒙 |
エネルギー源 | 再生可能エネルギーの普及 | 再生可能エネルギーの一般化による電力調達コスト低下 | 長期 | 中 | ・当社及びサプライヤーでの再生可能エネルギーへの転換 | |
製品・サービス | 環境配慮商品の販売促進 | 環境配慮商品・サービスに対する需要の増加 | 中期 | 大 | ・環境配慮事業の成長に向けて投資/開発を拡大 | |
生産者と消費者の関係構築 | 生産者と消費者の関係構築の強化による需要増加 | 中期 | 大 | ・製品:生産工程を可視化し、生産ストーリーやこだわりの伝播 ・サービス:生産者及び生産地に直接触れることによる体験価値を提供 |
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市場 | 気候パターンの変化 | キャンプシーズンの長期化に伴う需要増加 | 長期 | 中 | ・気候パターンの予想と生産計画の変更 | |
商品の長寿命化 | MRO(Maintenance, Repair, Overhaul)ビジネスの拡大 | 中期 | 大 | ・リユース事業の展開 | ||
レジリエンス | 自然災害頻度の増加 | 防災グッズなど自然災害に適応する商品の需要増加および事業機会の獲得 | 中期 | 大 | ・防災観点におけるアウトドア製品の有用性を個人自治体・企業へ訴求 |
リスク管理
気候変動関連のリスクを選別・評価するプロセス
当社では、「リスク・コンプライアンス規程」を制定し、COSO ERMフレームワークに従い、気候変動リスクを含む事業運営上において発生しうるあらゆるリスクの予防、発見、是正、及び管理体制の整備と、発生したリスクへの対応を決定するために代表取締役会長兼社長執行役員を委員長、各部門長及び取締役監査等委員を委員とした「リスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。サステナビリティ事務局は、リスク・コンプライアンス委員会において、気候変動に伴うリスクについて、経営・財務・事業などへの影響を考慮し、新規リスクの抽出・評価を行い、重要リスクの特定を行っています。
気候変動関連のリスクを管理するプロセス
特定した気候変動関連リスクについては発生可能性と影響度から重要性を判断し、重要と評価されたリスクについてはそのリスクの軽減のためにリスク・コンプライアンス委員会にて対応方針を検討・決定し、経営会議にて審議した後に取締役会へ報告しております。また取締役会は報告された気候変動関連リスクについて審議を行い、決議された対応方針はリスク・コンプライアンス委員会を通して関係部門に展開し、その対応状況をモニタリングしています。
全社リスク管理への統合
グローバルな全社リスクを管理するリスク・コンプライアンス委員会では、サステナビリティ事務局が主体となって、気候変動関連リスクを検討しております。委員会内では定期的に双方のリスク認識についてすり合わせを行い、緊急性を要するものについては全社的なリスク管理の観点から対策の実施、モニタリングを行っています。
指標と目標
当社では、かねてより気候変動のリスク・機会の管理に用いる指標として、GHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量(Scope1・Scope2)の算定を実施しております。この度、2023年度の温室効果ガス排出量(Scope1・Scope2)を算定いたしました。Scope3については現在算定中のため、完了次第公表を予定しております。
また、当社は、2023年6月にScope1およびScope2の2032年温室効果ガス排出量50.4%削減という目標を設定いたしました。本目標の達成に向け、再生可能エネルギーの導入や、省エネルギーの徹底など各種取り組みを推進しております。今後はScope3の削減目標を設定し、自社製品のリサイクル率向上や主要サプライヤーとのエンゲージメント活動の強化などにより、削減に向けてより強力に取り組んでまいります。
指標と目標
指標 | 目標 | 目標年度 |
---|---|---|
温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2) | 2022年比 50.4%削減 | 2032年 |
温室効果ガス排出量(実績)
単位:t-CO2e | 2021年度 (2021年1月〜2021年12月) |
2022年度 (2022年1月〜2022年12月) |
2023年度 (2023年1月〜2023年12月) |
前年対比 |
---|---|---|---|---|
Scope 1 | 333 | 549 | 543 | 98.9% |
Scope 2 | 946 | 1,299 | 1,210 | 93.1% |
Scope 1+2 | 1,279 | 1,848 | 1,753 | 94.9% |
Scope 3 | - | 126,854 | - | - |
Scope 1+2+3 | - | 128,702 | - | - |
オフセット量 | 0 | 551 | - | - |
最終排出量 | - | 128,151 | - | - |
2023年度実績について
2023年度のScope 1、Scope 2の温室効果ガス排出量は前年と比較し、国内外で再生可能エネルギーへの切り替えを進めてきたことから、主にScope 2で前年比約7%の削減を実現しております。2024年度以降もカーボンニュートラルに向けて具体的な削減について検討を進めてまいります。